AIの分類としくみ

AI(人工知能)とはなにかを理解するためのカギは、「どんな種類があるのか」と「どのようなしくみで動いているのか」を分けて考えることです。

このページでは、現代のAIを支える代表的なアプローチについて解説し、どのように学習し、どのように判断を行っているのかを比較しながらはっきりと描きます。

1. AIの分類の分類

分類軸分類例説明
技術軸ルールベースAI/機械学習AI/ディープラーニングAIどんな技術で動いているか
機能軸識別AI/生成AI何をするAIか
自律性軸弱いAI/強いAI/AGIどのくらい汎用的か

2. 技術軸:どうやって動いているのか

AIが分類上どのような知能を持つかに加えて、「どうやってその知能を実現しているか」という技術的な“しくみ”は重要です。ここでは代表的な3つの方式と、それらを組み合わせた概念を比較しながら紹介します。

2-1. ルールベースAI(シンボリックAI)

  • 学習:なし(人間がルールを記述)
  • 推論:論理演算(if/then)による演繹的推論
  • 特徴:説明可能性が非常に高いが、柔軟性に欠ける

2-2. 機械学習AI(Machine Learning-based AI)※深層学習以外

  • 学習:データからパターンを学習(教師あり/なしなど)
  • 推論:学習されたモデルに新しい入力を与えて予測
  • 特徴:柔軟で高精度、だが説明性に乏しい

代表的な手法:

  • サポートベクタマシン(SVM):データを最大のマージンで分類
  • 決定木:はい/いいえの分岐で判断のルートを作る

2-3. 深層学習AI(Deep Learning-based AI)

  • 学習:大量のデータを使って重み(特徴)を自動的に調整
  • 推論:学習済みの多層ネットワークを通して予測や分類を実行
  • 特徴:抽象度の高い特徴を扱えるが、説明が難しい

代表的な構造:

  • CNN(畳み込みニューラルネットワーク):画像認識
  • Transformer:LLMの基盤技術。文脈理解に強み

2-4. その他

ハイブリッドAI:

  • 学習:機械学習パートでパターンを学習
  • 推論:必要に応じてルールや知識ベースを活用
  • 特徴:バランスの取れた設計が可能だが実装が複雑

例: 入力を機械学習で分類 → 応答はルールベースで安全に制御

XAI(Explainable AI):

AIが「なぜそう判断したか」を説明できるようにする技術です。特に機械学習やディープラーニングのブラックボックス性を補うために研究が進んでいます。

  • 必要性: 医療・金融など、判断の根拠が重要な領域で不可欠
  • アプローチ:
    • LIME / SHAP:出力に対する要因分析
    • 注意マップ(Attention Map):AIが注目した部分の可視化
  • 特徴: 信頼性の向上と社会的受容を支える技術

3. 機能軸:何をするAIか?

AIは、「何を目的として設計されているか(=機能)」という観点からも分類することができます。ここでは、AIが主に行うタスクのタイプに注目し、「識別AI」と「生成AI」という2つの代表的な方向性を紹介します。

3.1 識別AI(Discriminative AI)

識別AIは、「これは何か?」という問いに答える、いわば“見分ける”AIです。与えられたデータに対して、それがどのカテゴリに属するかを判断したり、スパムか否か、異常かどうかを判定したりといったタスクに使われます。

従来のAIの多くはこのタイプであり、機械学習(SVMや決定木など)やディープラーニング(CNNなど)による画像分類、音声認識などが典型例です。

3.2 生成AI(Generative AI)

生成AIは、学習した情報をもとに新しいものを“生み出す”AIです。文章、画像、音声、動画、コードなど、まったく新しいデータを作成できる点が最大の特徴です。

ChatGPTやStable Diffusionなどがこのカテゴリに属し、クリエイティブなタスクや知的支援に活用されています。

識別AIと生成AIは、どちらもディープラーニングなど共通の基盤技術を使うことがありますが、目的やふるまいは異なります。「見分けるAI」と「生み出すAI」という機能の違いに注目することで、それぞれの役割や使いどころが明確になります。

ただ生成AIは、その生成過程には文脈や特徴の識別が含まれます。たとえば文章を生成するためには、次に来る単語を文脈に応じて選び取る判断が必要です。この意味で、生成AIは識別的な処理を内包しながら、全体として“創造的な出力”を目指していると言えます。

4. 自律性軸:どのくらい汎用的か

4-1. Narrow AI(特化型AI)

Narrow AI(特化型AI)は、特定のタスクだけをこなすAIで、現実世界の多くのAIがこの形に近い特性を持っています。たとえば、会話に特化したAI、翻訳専用のAI、自動運転を担うAIなどが該当します。

4-2. General AI(汎用型AI)

一方、General AI(汎用型AI)は、人間のように幅広い知識を統合して新しい課題に対応できる「柔軟で適応的な知能」を指します。複数の能力を組み合わせ、未知の状況にも適応できるAIのあり方です。

4.3 AGI(人工汎用知能)

AGI(Artificial General Intelligence)は、General AIの概念をさらに明確にした用語で、人間のように幅広な知的活動を継続的に行い、多様な問題を自律的に解決できるAIを指します。近年登場した大規模言語モデル(LLM)は、このAGIに近い性質を持つとされる一方で、まだ人間の知能に匹敵する段階には達していないという見方もあります。

まとめ

AIは一見万能に見えても、その背後には目的や構造の違いがあります。「どんな仕組みで(技術軸)」「何を目的に(機能軸)」「どのくらいの汎用性で(自律性軸)」の分類を理解することで、AIに何ができて何が苦手なのかを見極める力がつきます。

次回は、「AIはどう学び、推論するのか?」その仕組みをさらに深掘りしていきましょう。

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